問29 原点に置かれた スピン の 原子核 が、外部から不均一な 電場を受けている。基礎になる 電気4重極相互作用 は
のようにとることができる。ここではラプラス方程式を 満たす 静電ポテンシャルであり、座標軸は
となるように選ばれている。このとき相互作用エネルギーは
のように書くことができることを示し、 とを などで表せ。エネルギー固有ケットを(,を用いて)定め、対応するエネルギー固有値を求めよ。縮退はあるか。
核四極子共鳴
[解答] まず、をもとめよう。 スピン演算子は
とはしご演算子であらわせるので
を用いると、
をえる。 よって、
と書ける。
ハミルトニアンを,を基底ケットに とって行列表示すると
となる。固有方程式は
となって、エネルギー固有値は2重に縮退している。 この縮退は、ハミルトニアンの 時間反転不変性 の結果、角運動量が半整数の系に必ず存在する クラマースの縮退 の例となっている。 (教科書4.4節参照)
時間反転をすれば、 スピン の向きは逆になるがハミルトニアンは不変である。 したがって、スピン逆向きの状態は元の状態と同じエネルギーを持つ固有状態となる。 また、が半整数のときは、のように が ゼロに成る状態を作れないので、スピン逆向きの状態は元の状態とは 異なる状態となる。よって、クラマースの縮退が起こる。 このことを本問の固有ケットについて確かめよ。