近年、高性能計算機の発達とともに 時間依存シュレーディンガー方程式の数値解法が 重要になってきているが、 ルンゲ・クッタ法で解こうとすると数値解が発散することが 数値計算上の障害となっている。 そこで、我々は時間依存シュレーディンガー方程式の 安定な数値解法を研究してきた。 その成果として 条件付き安定な数値解法である Symmetric Multistep 法を提唱して、 数値解の安定条件を詳細に明らかにしてきた[8]。
Symmetric Multistep 法の最も簡単な例である
「蛙跳び法」では、ハミルトニアン行列の最大(最小)固有値と
時間ステップ との積の絶対値
が
1より小さい場合は波動関数の時間発展を
安定に計算できるので、本研究で実時間グリーン関数を求める際には「蛙跳び法」を
安定条件
のもとで用いる。
一方、無次元化した時間ステップ
が1を越えると
「蛙跳び法」の数値解は指数関数的に発散する。
この発散解は、シュレーディンガー方程式を解く際には邪魔になるものであるが、
本研究ではこの発散を積極的に活用して
大規模エルミート行列の固有値固有ベクトル問
題を効率的に解くことを試みる。