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問10 スピンを持たない粒子が、 対称性  がなくエネルギー準位に 縮退  を作らないポテンシャルによって、ある固定された中心に 束縛  されている。 時間反転不変性  を用い、任意のエネルギー固有状態に対して

を証明せよ。(これは、 軌道角運動量の消失  と呼ばれている。) このような非縮退固有状態の波動関数が

のように展開されたとすると、に対してどのような 位相の制限 が つくか。


[解答] a.  時間反転不変な系では、固有状態

となるので、は同じエネルギーを持つ。 よって、エネルギー準位に縮退がなければ、位相因子を除いて

とおける。 軌道角運動量 演算子は、時間反転に関して奇 であるから、 恒等式(4.4.36)より

となり、

と結論される。 結晶中の電子のように、ポテンシャルの対称性が低いときは、軌道角運動量の消 失により、軌道磁気モーメントがゼロになることがある。

非縮退固有状態の波動関数を

 

とすると、時間反転した波動関数は

 

となる。式(21)と式(22)が位相を除いて等しいためには

が成り立つ必要がある。



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Iitaka Toshiaki
1996年07月27日 11時31分42秒