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問18 1次元 調和振動子  の コヒーレント状態  は、(非エルミート的な) 消滅演算子  の固有状態として定義される:

ここでは一般に複素数である。

a.
状態ケット

が 規格化  されたコヒーレント状態であることを示せ。

b.
この状態に対して、 最小不確定関係   を証明せよ。
c.

の形に書け。に関する分布が、ポアソン型であることを示せ。 を最大にするの値、したがっての値 を見出せ。

d.
コヒーレント状態は(有限変位の) 平行移動演算子  を 基底状態  に作用させることによっても 得られることを示せ。ここでは 運動量演算子で、 は変位の距離である。
(Gottfried 1966, pp.262-64をも参考にせよ。)


[解答]
a.
  すぐ後で証明する設問 c.の結果を使って、 ケットが規格化されていることが、

と示される。また、コヒーレント状態であることが、 ベーカー・ハウスドルフの補助定理  を用いて

と示される。

b.
 位置のゆらぎは、

であり、運動量のゆらぎは

となるので、コヒーレント状態は、最小不確定 関係

を満たす。 波束の図

c.
 コヒーレント状態をエネルギー固有状態で 展開すると

となるので、

を得る。したがって、に関するポアッソン型分布

を得る。 ここで両辺の対数をとると

となる。したがって、不等式

すなわち

を満たす限り、は増加関数

となるので、を越えない最大の整数のとき が最大値をとる。したがって、を最大にするの値 およびの値は、 ガウスの記号 を使って

と表される。

d.
 調和振動子の基底状態に有限変位の平行移動演 算子 を作用させた状態

に消滅演算子を作用させると

となる。したがって、状態は、固有値

を持つコヒーレント状態である。ただし、上の計算で ベーカー・ハウスドルフの補助定理  と交換関係

および調和振動子の基底状態の性質を使った。

以上のことから、問11でも扱った、振動する古典的調和振動子に対応する状態 はコヒーレント状態であることが分かる。



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Iitaka Toshiaki
1996年07月27日 11時31分42秒