(ハイゼンベルグ表示:JJ2.2節)
問1 本文で議論したスピンの際差運動の問題を考える。これは ハイゼンベルグ表示によっても解くことができる。ハミルトニアン
を用いて、時間に依存する演算子,およびに
対するハイゼンベルグの運動方程式を書け。これらの方程式を解いて、
を時間の関数として求めよ。
問2 1次元の自由粒子の位置座標演算子を、ハイゼンベルグ表示で とする。
を計算せよ。
絶対に盗聴されない暗号を作るために東西のスパイたちは日夜知恵を絞ってきたが、 物理学者は、隠れて盗聴される心配のない暗号を量子力学の基本法則の助けを借りて 実現することについに成功した。以下、量子暗号の基本原理を理解するための練習問題 を示す。サクライの教科書3.9節「スピン相関の測定とベルの不等式」および 3.7節「角運動量の合成」も参考にすればより深い理解が得られるであろう。
暗号装置は、電子対を1個はy(+)方向に他方はy(-)方向に放射する放射線源で、 全角運動量がゼロの状態(一重項状態)
で電子対を放出する。y軸の両端には恋人たちAliceとBobがそれぞれいて電子のスピンを 観測する。 ケットはy(+)方向の端にいるAliceによって 観測される電子の状態を表す。 ケットはy(-)方向の端にいるBobによって 観測される電子の状態を表す。
このカップルは、 それぞれ単位ベクトル,,方向の スピン成分を測定する3台の装置を持っている。 ベクトル,は、x-z平面上にありz軸と, の角をなす。ここでは、,, と,, としよう。上付きの添え字aとbは、 それぞれ AliceとBobの測定装置であることを表す。
二人は、それぞれ独立にかつランダムに自分の測定装置を選んで 測定を繰り返す。
問1 Aliceが、Bobが方向の測定をしたとき、 それぞれスピンおよびを観測する確率を とする。 これは、たとえば
のように計算できる。を4つともすべて求めよ。
問2 相関関数を
と定義する。 となることを証明せよ。
問3 さらにAliceとBobが異なる向きの測定をした場合の相関関数から新しい量
を定義する。Sを求めよ。
問4 さて、ここで二人の仲を邪魔しようとしているしているEveが登場する。 EveがAliceの方へ飛んで行く粒子のスピンの情報を得ようとして 途中でスピンのz成分を測定した。このとき、例えば
のようにして をすべて求めよ。 また、およびSも求めて、 Eveが立聞きしているときと、していないときのSを較べよ。
問5 以上の結果を用いてどの様にしてAliceとBobはEveに秘密にして通信する ことができるか、参考資料を読んで考えよ。この方法の欠点はなにか。 もっとよい方法を発見したら、レポートにして提出せよ。